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レジオネラ菌問題について

(一銭湯の立場から)

銭湯の立場から極めて個人的意見としてレジオネラ問題を見る。

従って公的機関による対処法とは違っていると思いますし、これが正し

いと云えるかどうかはそれぞれの判断にゆだねます           

(随時更新します)

◎循環風呂

 こんこんと湧き出でる湯等と称される温泉は、日本でも限られた名湯のみに見ることができる。
豊富な湯量から、常に湯船にお湯が流れ込み溢れている状態のお風呂があります。普通皆が持ってい
る温泉のイメージです。
 それに対し、限られた水資源を利用し、浴槽水を循環ろ過殺菌してしている風呂が“循環風呂”と
称されます。すなわち濾過器の付いた風呂は皆循環風呂と云えます。日本の公衆浴場の90%以上が
これになります。(公衆浴場とは一般の公衆浴場=銭湯と、その他の公衆浴場=公共施設内の入浴施
設や企業が社内に持つ入浴施設、温泉宿・プール・病院等々の多数の人が利用する入浴施設を指しま
す)濾過殺菌システムの出来る前は、浴槽水は使って減ったぶんを注ぎ足し閉店後に抜くといった方
法で使われ、一日に何百人もが利用する状況では衛生的にはかなり問題がありました。
  濾過殺菌システムが使われるようになってからは、浴槽水を循環させながら(1時間におよそニ回
転する)汚れを取り殺菌する事でより綺麗で衛生的に浴槽水を管理できる様になりました。
 温度管理の方法も、直送りと言って沸かして蓄えた貯湯タンクからのお湯を(80度C前後)濾過
ラインとは別に直接浴槽に送り温度管理をする方法(温度調節の過程でオーバーフローが起こりやす
くなり、換水率は高いが、それに伴ない燃料・水の消費が高くなる)から、お燗システム、循環濾過
の途中に熱交換器を組みこみ温度管理するものに変わって来ました。
 水や燃料の節約は“限られた資源”の観点から、間違った方向性とは言えず、むしろ今後より推進
し行くでしょう。より熱効率の良いボイラーや、精度の高い濾過器やシステムの開発です。
 このような循環濾過システムが実現したのも殺菌システムがあってこその産物です。循環濾過シス
テムは<循環濾過殺菌システム>であり、殺菌システムを省いた<循環濾過システム>は有り得ませ
ん。
 今までに起こったレジオネラ菌による集団感染事件は、<循環濾過殺菌システム>の誤解釈による
ものと言えるでしょう。とりわけ公共施設の“公衆浴場”ではその管理者に循環システムや水質管理
の知識・経験があったとは思えません。それ故<濾過システム>のみで殺菌をも賄えると考えていた
のでしょう。もっとも原水そのものがレジオネラ菌に汚染されていたのではどのような対処もありま
せん。何故、汚染された水を使おうとしたのかが一番の問題点です。

 銭湯ではレジオネラ菌が問題になる遥か以前から“殺菌”についての意識は高かったように思いま
す。おもにその対象は大腸菌やその他の雑菌でしたが、レジオネラ菌に於いてもその殺菌方法変わり
なく通用するものです。入浴者数や営業経過時間により(入浴者数でおよそ70〜100人、時間で
はおよそ4〜5時間)で塩素を追加します。(厚生省の対レジオネラマニュアルでは0.2〜0.4
ppmを2時間維持する事と換水を推奨していますが、一日6時間程度の営業で入浴者数が100人
程度の公衆浴場に於いて有効でしょう。それでも閉店前にはもう一度塩素を入れた方が良いでしょう
。)出来得るならその基準よりも短いサイクルでの塩素管理ができるならばそれに超した事はありま
せん。
上記はあくまでタイムリミット的な判断です。
濾過器では、砂濾過器の場合は入浴者が200人を越える場合は150人を目処に営業時間中であっ
ても一旦止めて逆洗しますし、珪素土濾過器では珪素の追加をします。(最近出てきたセラミック濾
過器はセラミックの多孔質を利用して濾過するもので、1000人程度の能力があると云われていま
すが、多孔質であるが故に逆洗?が難しい。営業中に何ら手を加える必要は無い様だ。)
この作業をサボると、浴槽水の青みがかった色が消え、最悪白っぽく濁ります。(白く濁るというの
は雑菌が異常に増殖した状態です。
だから銭湯ではきれいなお湯を提供する事は、いかに殺菌するかと同義語に近いものと考えています

 しかしながら、20年前頃より銭湯を取り巻く状況は大きく変わってきました。広い敷地を持ち、
色々な浴槽を持つ<特殊浴場>の出現です。その後、豊富な資金を有する地方自治体や、異業種から
参入も加わり、設備の豪華さや浴槽の種類を競い、1q以上もの深い井戸を掘り(100m掘るのに
1千万円かかる)<天然温泉>を売りにしたり、循環途中に特殊鉱石をくぐらす事で<準天然温泉>
を名乗る特殊浴場も出現しました。
※特殊浴場=銭湯以外の入浴施設で、現在では<その他の公衆浴場>、一般には銭湯と同じ公衆浴場
 と呼ばれる。
これらの特殊浴場が銭湯に影響を与えないわけがなく、当然の様に銭湯に於いても浴槽の種類は増え
て来ました。又、マスコミもその風潮をあおる傾向にあり、利用者もそのことを当たり前の事として
喜ぶ事から、加速度がつきました。
 しかし、その過程に於いては、一種の踏絵にも似た選択があった事は事実です。
多様な浴槽は、その安全管理が従来の方法では難しい部分があり、それぞれにその特質に合ったシス
テムをつくる必要性があります。
◎過去のレジオネラ症集団感染例
  ※それぞれの例に個人的な疑問点等の注釈を入れますが、これは決して個々や機器メーカーへの
   批難・中傷では有りません。今後、より安全で快適な公衆浴場を目指す上での自問自答です。
※ '00年3月 静岡県掛川市 民営複合レジャー施設内温泉入浴施設
 2月11日 オープン
 4月 4日 営業停止 この間およそ50日間に約57000人が利用(1日平均約1000人)
 レジオネラ症患者発生 3月2日〜4月4日 23名感染、内2名死亡
 施設内容=ナトリウムー塩化物温泉を使用した27種の浴槽を持ち、5基の砂濾過器(塩素注入装
      置付き)で循環濾過殺菌していた。
      1〜2週間に1度部分換水していた。
 菌の検出=施設内14ヶ所から採水、培養検査の結果、同一濾過器を使用の、露天ジャグジー(
      57,000CFU/100ml)・内湯(88,000CFU/100ml)からレジオネラ菌を検出。患者の菌と合致
      する。詳細は http://idsc.nih.go.jp/iasr/21/247/dj2471.html
            http://www.iph.pref.osaka.jp/repot/harmful/detail/2003-sizuoka.html
 想定される原因=1台の塩素注入器が3月上旬から営業停止に至るまで、ノズルが詰まり停止状態
 (公表されたもの)に有った。その為、その注入器の循環濾過殺菌システムが担当していた内湯・
         露天(ジャグジー)風呂に於いて菌が増殖した。ジャグジーによって発生したエ
         アゾル(増殖した菌を含む)を吸い込むことで感染した。
         菌は露天風呂に外気から入りこんだと想定できる
 極めて私的な見解*露天風呂とジャグジー風呂を同一にした設計ミス。
          (露天風呂は外気に触れて菌が入りやすい)
         *露天風呂と内湯に同一濾過器を使用した。設計ミス。
         *組織に於ける、水質管理と機器運転管理の不整合。

 私的コメント=○塩素注入器は時として目詰まりを起こす。塩素の注入が止まり、その後も入浴者
         がその浴槽を利用し続けると浴槽水は白濁する。
         この施設では原水にナトリウム塩化物温泉を使っており、この種の温泉には白濁
         したものもあり(温泉水の詳細なデータがネットでは公表されていない為推測で
         す)注入器の故障に気がつかなかったと思われる。
         
         浴槽水の点検は日常的に行なわなければならない。銭湯ではボイラー室の管理運
         営者と水質管理者はほぼ同じ人間が受け持ち、水質の管理と検証は直結している
         が、この施設のような大型店ではどうだろうか?ボイラー室を管理運営する人間
         (水質管理者)が直接浴槽水の点検をしていたのだろうか?
         温泉水本来の白濁と水質悪化の白濁は明らかに違い、水質管理者が見れば一目瞭
         然である。半月以上もの間、塩素注入器の故障に気付かなかった原因には、その
         組織上の安全管理システムに問題があったのではなかろうか?
        ○レジオネラ菌が検出された同一濾過器を使用の2つの浴槽以外の浴槽からはレジ
         オネラ菌は検出されていないが、27の浴槽に対し5基の濾過器はあまりにも少
         ないように思う。砂濾過器の大きい物で、100/h(1時間に100トンの水を
         処理できる)があるが、公衆浴場では1時間に2ターン(2回転)が原則だから
         100t/hの濾過器は50m3 浴槽水を賄える計算になるが、サウナを省いて
         も25の浴槽に対し5基の濾過器と云うのは少ない気がする。又、濾過器の性能
         に付いては多くの誤解が蔓延しています。どのような濾過器に於いても1日に千
         人もの処理能力は持たないと云う事です。現在の濾過器の致命的欠陥のエアー混
         入に弱い事を考慮すると100tの濾過器でも500人が限度ではないだろうか
         、どうしても営業中であっても一旦機械を止めての逆洗洗浄は必要だろう。
                  
                                     ('02.10.16更新)
   
※’00年6月 茨城県石岡市 総合福祉センター「ふれあいの里石岡ひまわり館」
 
  4月 7日 オープン
  6月23日 レジオネラ症患者複数発覚
        5月20日〜6月23日に利用 同8日〜23日に発症集中
  6月24日 自主休業 この間 約16000人が利用 1日約250人
  7月 7日 営業停止処分60日(後に90日と50日が追加され計200日の停止処分)
  施設内容=8浴槽、濾過器(セラミック濾過器)4基、塩素滅菌器4台
       屋内風呂×2、サウナ、ミストサウナ、寝風呂、打たせ湯、露天風呂、露天ジャグジ
       ー風呂
       原水は不明(水道水か井水かは公表されず。)
       浴槽水は光明石ユニットを使った<準温泉>
       2月半で1〜2回換水→メーカーから3ヶ月に1度の換水で良いと説明を受けていた
                  ことから、おそらくは1度も換水をしていなかった?
 途中で休止していますがどうしても公表された<事実>だけでは理解できない事もあり、95年から
 の議事録を読み漁ったりと資料を集めています。もう暫らく猶予を下さい 
                                                                     ('03.1.15更新)